21世紀最初の聖夜を君と・・・
2001年、12月24日・・・クリスマスイヴ。
街はクリスマスセールやイベントなどで華やかにデコレーションされた街路樹や建物で溢れかえっている。
その街中を歩く者たちも、聖夜を恋人や家族と過ごすために、どこかいそいそと早足になっているようであった。
そんな中、一人の青年が楽しげにしている者たちを横目にケーキショップの店頭で働いていた。
「いらっしゃいませ!今日はクリスマスセールで全品半額となっておりまーす!!」
彼の威勢の良い声が賑やかな冬の街中に響き渡る。
多くの者たちが楽しく過ごそうと考えている中で、運悪くクリスマスイブにまでバイトに駆り出されてしまい、こうして客の呼び込みをしている訳だ。
勿論、彼も店長に何とかならないかと訴え出てみたのだが、人手が足りない上に店の忙しさも含めて結局働く事になってしまった。
給料を貰っている以上、下手に文句は言う訳にいかない。
・・・とは言え、やはり楽しげなカップルや家族連れが客として店に来ると・・・。
「はい、いらっしゃいませ!こちらのショートケーキなどはいかがでしょうか?」
(はぁ・・・、クリスマスイヴも仕事で終わりか・・・。仕事が終わったら・・・どうしよう・・・・。)
「あの・・・?苺ショートケーキ三つお願いしたいんですけど?」
「!!・・は、はいっ!ありがとうございます!」
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その後、時間はあっと言う間に流れて・・・。
「お疲れ!もうあがっていいよ!」
「はい、お疲れ様でした。」
「悪いね、こんな時期だって言うのに。」
「あはは・・・、まあ仕事ですから・・・。」
「あ〜、そうそう!わざわざクリスマスに呼び出したお詫びと言っちゃアレだが・・・。そこの余ったケーキ、持って帰ってもいいぞ。」
「・・・あっ、ありがとうございます。」
「家に帰ったらゆっくりと休んでくれ。それじゃあ、お疲れさん!」
こうして彼はクリスマスイブにバイトをする羽目になった代わりに、二人から三人用のやや大きめのケーキを手に自宅のアパートへと向かった。
しかし、ケーキを貰ってもあまり嬉しくはなかった。なぜなら・・・。
「・・・ケーキなんか貰ってもなぁ・・・。一人で食べたっておいしいものじゃないし・・・。」
そう、彼にはクリスマスケーキを一緒に食べるような彼女はいなかった。
ひびきの高校に通っていた頃は、伊集院家の豪華なパーティーに参加して楽しかった思い出があるのだが・・・。
高校を卒業してから、三年間を過ごしたひびきの市を離れて一人暮らしを始めて・・・。
大学に通いながらアルバイトをしている今となっては、彼にはそんなイベントなどあるはずがなかった。
「ただいま・・・っと。」
誰も居ない部屋にただいまと言うのも虚しい気もするが、今までの癖で帰宅すると自然に挨拶が口から出るようになっていた。
コートを脱いでハンガーにかける。それからストーブのスイッチを入れて、ゆっくりと居間のコタツに入り込んだ。
ケーキの入った箱を下駄箱の上に置いたままだった事を思い出したが、玄関なら寒いから冷蔵庫に入れるよりも冷えると思って放っておいた。
・・・・今年は一人きりのクリスマス・・・か・・・。
何気無く呟いてみると、何だか余計に寂しく思えてならない。
景気付けにテレビを入れてみると、クリスマスの街中を歩いているカップルにインタビューをする番組がやっていた。
何とも皮肉なタイミングだ。
『(現在、私はカップルたちで賑わう**街に来ています!見て下さい!このカップルたちの数!きっと二人きりでクリスマス過ごすんでしょうね〜!)』
「・・・・・・。」
彼は五秒でテレビのチャンネルを切り替えた。
テレビの女性アナウンサーが何だかやたらと明るい声で実況しているのが、何故か印象に残った。
ひょっとしたら、クリスマスイブにあんな場所で実況しなければならないことで、半分ヤケクソになっているのかもしれないと思った。
だが、あれも仕事なんだろうとすぐに思い直すのだった。
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一人で適当に作った夕食を食べて、入浴を済ませて・・・。
彼はこれ以上、虚しい思いをするのは嫌だったので、今夜は早めにベッドに潜り込んで眠ることにした。
「(・・・・匠は寿さんと付き合い始めたみたいだし、純は・・・まさか水無月さんとくっつくとはなぁ・・・。結局、余ったのは俺だけ・・・か。)」
今頃、あいつらは楽しく過ごしているんだろうと思うと、何だか悔しい。彼自身にも好きな女の子はいた。
それに、片想いという訳でもなかった。相手の子も彼にだけは自分の辛い過去を話してくれたり、明るい笑顔を見せてくれたものだった。
だが・・・、卒業式の日・・・。
彼が恋い焦がれた少女は・・・彼の所に告白には来なかった。
それどころか、卒業式が終わってから彼女の姿を探したのだが・・・彼が彼女の姿を見つけた時には・・・・。
中庭で見知らぬ男子生徒に告白されている少女の姿であった。
彼はその瞬間、世界が崩壊するような・・・そんな衝撃を受けてその場に立ち尽くしてしまった。
彼が好きだった・・・ずっと想い続けていた少女の名前は・・・八重花桜梨・・・。
「・・・八重さん、今頃何をして過ごしているのかな・・・・。」
中庭の壊れた時計台の下で告白を受ける花桜梨の表情はよく見えなかった。雰囲気からして、戸惑っているようにも見えた。
しかし、告白を終えた男子生徒の顔が・・・花桜梨が返事と思われる言葉を伝えた瞬間にぱあっと輝いたのだ。
・・・!!
彼は悟った。
自分は・・・ふられたんだと言う事を・・・。
花桜梨はその男子生徒の告白を受け入れたんだと言う事を・・・。
彼女と過ごした三年間が走馬灯のように彼の脳裏を駆け巡り、浮かんでは消え、浮かんでは次々と消えていった・・・。
その後はどうなったのかは分からない。
ただ、その場に居ることが出来なくなり、自宅へと全力で走って帰ったと言う事だけは覚えている。
帰って来てから、自分の部屋に閉じこもると彼は何年ぶりかに泣いた。
心配した母親が部屋の前に様子を見に来たが、鍵をかけて室内には入らせなかった。
とにかく、泣いて泣いて・・・花桜梨の事を・・・三年間の思い出を全て頭の中から消えるように泣き続けたのだった・・・。
しかし、いくら泣いても彼女の思い出を完全に消す事は出来なかった。
初めて逢った時の花桜梨の寂しげな瞳・・・儚げな姿・・・打ち解けてきてから見せてくれるようになった微笑み・・・。
バレー部に入ってからの生き生きとした姿・・・。そして、文化祭で後夜祭の時に見せた幸せそうな表情・・・・。
高校生最後の・・・つまり、去年のクリスマスで一つのコートを一緒に羽織った時のこと・・・。
それらを完全に忘れ去るには、泣くだけでは足りなかったのだ。
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卒業式の日、彼の自宅や携帯に花桜梨から何度か電話があったが彼が電話に出ることはなかった。
出たくても出られなかった・・・花桜梨の口から、恋人が出来たと言うことを告げられる事が何よりも恐ろしかったから・・・。
(・・・・やば、何を思い出してんだろうな・・・俺は・・・。)
それ以来、花桜梨との連絡は一切取っていない。
家族にも花桜梨には自分の居場所は知らせないように口止めしておいた。
花桜梨に対して完全に消極的な自分がいることに、その時の彼は気付かなかった。
今になって、やっとあの時の事を客観的に考えられるようになったものの、大学に行っても男友達は出来ても女友達は出来なかった。
いや、彼自身がそうなることを避けていたからだ。友人の間でコンパなどがあっても、あえて都合をつけて断ってしまっていた。
新しい出会いをするためには自分から動かなければならないと言う事を分かっていても・・・勇気が出せずに動く事が出来ないでいた。
(・・・・もう寝よう!それが一番だ・・・。)
目を閉じると眠ることに集中した。
五分・・・十分・・・時間だけは過ぎていくものの、なかなか寝付く事が出来ない。
時計の針はまだ10時を過ぎたばかりだ。普段よりも三時間近くも早く眠ろうとしても、寝付けないのは当然である。
(・・・・眠れない・・・。くそっ・・・!)
眠れない事にさえ苛立ちを覚えて、思わず布団を蹴飛ばしてしまう。
その途端、12月の寒さが彼を包み込む。
「うおっ!寒い!寒い!!」
慌てて布団をかけ直して、再びベッドに横になる。
結局、天井を見つめながら自然と眠くなるのを待つことにした。
そして、ようやくうとうとして来た矢先・・・。
ピーンポーン!
「・・・!?・・・誰だよ、こんな夜中に・・・。」
突如インターホンが鳴らされて、彼は強制的に起こされてしまう。
明らかに苛ついた表情のまま、玄関の鍵を開けてドアを開けた・・・そこに立っていたのは・・・。
「!!・・・や、八重さん!?」
「・・・お久し振り。こんな遅くにごめんね・・・。」
彼の目の前に現れた女性は高校時代にずっと思いを寄せていた花桜梨だった!
しかし、卒業式の思い出が彼が素直に再会を喜ぶことを妨げる。
「・・・・何でここに君が・・・。・・・・それに、今更になって何をしにきたの・・・?」
「・・・・あの時の誤解を解こうと思って・・・・。」
「誤解・・・?」
「うん・・・。・・・あの、お邪魔してもいいかな・・・?」
「・・・・。」
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花桜梨は白いジャケットを脱いで、黒いタートルネックのセーターにシックな感じのスカート姿でコタツに入っている。
彼は花桜梨の好きなブラックコーヒーを淹れて、それをカップに注いで彼女の前に置いた。
「・・・ありがとう。まだ覚えててくれたんだね・・・。」
「・・・えっ?」
「私がブラックが好きだって事・・・。」
「・・・俺もブラックが飲めるようになったから・・・・。」
そう言うと、目線を明後日の方向に向けて不機嫌そうな顔をする。
花桜梨は彼の素直じゃない様子を見て苦笑しながら、コーヒーに口を付けた。
淹れたての熱いコーヒーを一口飲んでから『ふぅ・・・。』と息を吐く。
「美味しい・・・。コーヒー淹れるの上手なんだね・・・。」
「・・・い、いつも一人で淹れてるから・・・慣れってやつだよ・・・。」
「・・・本当にごめんね・・・。今まであなたを一人ぼっちにさせるようなことになっちゃって・・・。」
「八重さんが悪い訳じゃないよ・・・。俺が君を振り向かせる事が出来なかった・・・それだけの事だよ・・・。」
それから、彼は花桜梨にわざと背中を向けながらコーヒーを飲みながら訊いてみた。
「・・・・八重さん、彼氏はいいの?折角のイヴだって言うのに、俺の家になんか来て・・・。」
「・・・・やっぱり誤解しているんだね・・・・。さっきも言ったけど・・・。」
「誤解って・・・何を誤解したんだって言うんだよ・・・!」
思わず口調が荒くなってしまったが、一度爆発した感情を抑えることができなかった。
今までずっと胸の奥底に押さえ込んでいた花桜梨への想いが爆発したかのように口から出てきてしまう。
「あの日、卒業式の日に・・・君は誰かに告白されたじゃないか!八重さんはそれを受け入れたんだろ!?何を今更、誤解があるんだよ!」
「・・・・違う、違うの・・・!」
「何が違うんだよ!?俺は・・・俺はずっと君が好きだったんだ!あの日だって、君に告白しようとして探し回ったんだ・・・!けど・・・」
思わずカップを乱暴にテーブルの上に投げ出してしまう。カップが倒れて中のコーヒーがテーブルにこぼれた。
白い湯気がもうもうと上がる中、彼は続ける。
「けど・・・!中庭で君を見つけて・・・!それで・・・それで・・・!!」
「・・・卒業式の後、私は全然知らない男子から告白されたのは確かだけど・・・、私は断ったんだよ・・・?」
「う、嘘だ・・・!嘘だ!君の返事を聞いた男子は嬉しそうに笑っていたのを俺は見たんだ!」
彼はそう叫ぶように言うと、ぐっと握り拳に力を込めた。
だが、それを聞いた花桜梨の口から思いも寄らぬ言葉が出た。
「・・・・そこまで見ていたんだ・・・。でもね、あれは私がはっきりと返事をしたから・・・すっきりしたって言って笑っていたんだよ・・・。」
「・・・!!?」
「私には好きな人がいるからって断ったの。そうしたら、下手に誤魔化されるよりもちゃんとした答えを聞かせてくれて嬉しかったって・・・。」
「な、何だって!?」
・・・・そんな・・・まさか・・・!?あれは・・・俺の勘違い・・・!?
・・・だけど・・・いや・・・もしそうだとしたら・・・・!?
「・・・そんな・・・それじゃあ、悪いのは・・・全部・・・全部、俺じゃないか・・・・。」
「あなたのお家に電話しても電話に出てくれなかったから・・・。直接、私が訪ねればよかったんだけど・・・何て言えばいいか分からなくって・・・。」
「(・・・・・・何てこった・・・。)」
彼は魂が抜けて糸が切れた操り人形のように、その場にがっくりと膝から崩れ落ちてしまった。
それと同時に、これまで自分の勝手な思い込みで花桜梨を誤解してしまっていた事の罪悪感に苛まれる。
「俺は・・・俺は・・・自分の思い込みで・・・君の事を・・・。」
「ううん・・・、悪いのはあなたじゃない・・・。すぐにあなたに真実を言えなかった私が悪いの・・・。」
花桜梨は彼の元に歩み寄ると、優しくその手を握り締めた。それでも、彼は花桜梨の顔をまともに見ることが出来ない。
言葉すら出てこない。どんなに謝っても許されない気がして、呆然とするしかなかった。
「あなたのお母さんに必死で頼み込んで、やっとあなたの住んでいる所を教えてもらって・・・。それで、何とかここまで来れたの。」
「八重さん・・・こんな俺の為にわざわざ来てくれたのか・・・?」
「だって・・・、ずっと誤解したまま何て嫌だし、あなたにはちゃんと本当のことを知って欲しかったから・・・。」
「・・・うっ・・・ぐっ・・うぅっ・・・!」
次の瞬間、彼はこみ上げる涙を抑えきれずにその場にうずくまると号泣してしまった。
自分への悔しさと情けなさ・・・。そして、愛する花桜梨への申し訳無さからただ泣く事しか出来なかった。
「泣かないで・・・。悪いのは私なんだから・・・ね?」
「ごめん・・・!八重さん・・・本当にごめん・・・・!」
優しい花桜梨の言葉が、彼の涙を更に誘う。
花桜梨は泣きじゃくる彼の身体を起こすと、温かな胸に抱きしめて背中を撫でてあげた。
そして一言だけ彼の耳元で呟いた。
『・・・・これで仲直りだね・・・。』・・・と。
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・
彼が落ち着いた頃、花桜梨はテーブルに零れたコーヒーをふきんで拭いていた。
倒れたカップを静かに持つと台所に行って洗い始める。
カップを洗い終えると、彼が夕食で汚した食器なども一緒に洗ってしまった。
「・・・・八重さん、折角来てくれたのにごめん・・・。洗い物なんかさせちゃって・・・。」
「ううん、どうせ一緒に洗っちゃった方がいいでしょ?」
「えっと・・・、夕食は大丈夫?」
「あ・・・、まだだけど私なら大丈夫だよ。ダイエットにもなるし・・・。」
「か、身体に悪いよ。ちゃんと食べないと。そうだ、バイト先でケーキ貰っていたんだ。一緒に食べない?」
「本当に?・・・それなら、お言葉に甘えちゃおうかな・・・。」
彼は急いで玄関に置きっぱなしだったケーキの箱を持ってくると、コタツの上に置いた。
箱からケーキを出してみると・・・思ったよりも立派なケーキだった。
「わあ・・・、奇麗なケーキ・・・。」
「思ったよりも豪華みたいだね。・・・じゃ、じゃあ早速食べようか?」
彼は持ってきた包丁でケーキを切ろうとした・・・が。
それを花桜梨が制した。
「待って、折角なんだし電気を消してロウソクに火を付けない?」
「そうか、確かにその方が雰囲気があるよね。」
ハンガーにかけてあったコートの内ポケットから、煙草専用の100円ライターを取り出すとそれを持って再びコタツに入る。
花桜梨は彼が煙草を吸うことに気付くと、ちょっと切なげな表情を浮かべた。
「・・・あなたは煙草を吸うの?」
「・・・え?あ・・うん、軽いのを一日数本程度だけどね。」
「駄目だよ、煙草なんか吸っちゃ・・・。あなたの身体に良くないよ・・・?」
花桜梨はそう言って彼の顔をじっと見つめる。淡いグリーンの奇麗な瞳は彼だけを映している。
彼は花桜梨の視線の前に何も言えず、その瞳を吸い込まれるように見つめ返してしまう。
しばらくの間、しどろもどろになりながら彼は花桜梨の目を見つめていたが、彼女の方が口を開いた。
「約束、煙草はもう止めようね?」
「う、うん・・・。」
「うふふ、嬉しい。・・・じゃあ、ロウソクに火を付けましょう。」
花桜梨の微笑みというオプションが付いた約束に逆らえるはずもなく、彼はすぐに返事をしてしまう。
その優しい笑顔を見せられると、今までの誤解が本当に馬鹿げた事だったと思い知らされる。
だが、花桜梨はその事を何一つ責める事無く・・・むしろ、悪いのは自分だと言って謝ってきたのだ。
彼女の気遣いと優しさの前では、彼の中にあった彼女への疑念などはすぐに消えてしまっていた。
彼も自然と素直になっていたのかもしれない。
「何だか雰囲気が出てきたなぁ・・・。」
「うん、そうだね・・・。」
ロウソクに火を付けた彼が思わず感想を漏らすと・・・花桜梨は静かな声でそれに賛同する。
どれくらいロウソクの火を見つめていたか分からない。だが、不意に花桜梨がロウソクの火をふっと吹き消した。
「!や、八重さん!?」
「・・・・。」
花桜梨の返事が無い。
彼はコタツから出ると、明かりを点けようとした・・・その手を花桜梨がきゅっと掴んだ。
「・・・いいから・・・、ちょっと待ってて・・・。」
「???」
真っ暗になった室内にがそごそと衣擦れのような物音だけが聞こえる。
やがて音が止んで室内が静かになってから、彼は恐る恐る声をかけてみた。
「八重さん・・・?どうしたの?」
「・・・。」
花桜梨は黙ったままだ。不思議に思った彼がもう一度声をかけようとしたその時・・・。
不意に、自分の身体にに柔らかく温かい感触が伝わってきた。
「や、八重さん!?」
「・・・・寒いから・・・しっかり抱きしめてね・・・。」
「!!(や、八重さん・・・服を着ていない・・・!?)」
自分の衣服ごしに感じる柔らかな感触の正体が花桜梨の剥き出しになった胸だと言う事に気付くのにそれほど時間はかからなかった。
思わず花桜梨の両肩に手をあてて、花桜梨の顔を見てしまう。
「・・・八重さん、何を・・・!?」
「さっき・・・私のことを好きだったって言ってくれたよね?・・・あの言葉は今でも変わらない?」
「・・・そ、それは・・・。」
「私は・・・変わらないよ。あなたの事、ずっと・・・ずっと好きだった・・・、今だって大好きなの・・・。」
花桜梨は彼の背中に回した手にぐっと力を込めると、小さな声で・・・しかし、はっきりと自分の気持ちを伝えた。
予想もしていなかった花桜梨の告白に、彼は言葉が思い浮かばずにそのまま固まってしまう。
彼が何も言わない事を気にしたのか、花桜梨が更に言葉を付け加えた。
「今日だって・・・あなたの誤解を解くだけじゃなくて、一緒にクリスマスを過ごしたかったからっていうのもあるんだよ・・・。」
「俺と・・・一緒に・・・?」
「うん・・・。だから・・・私に持てる勇気を全部出そうって・・・。私の気持ちを分かって欲しいから・・・。」
花桜梨はそこまで言うと、彼の顔を見上げて静かに目を閉じた。
「・・・・八重さん・・・。」
「・・・・・。」
「・・・っ!」
花桜梨の可憐な唇に自分のそれを重ねる。
まさかこんな形で初めてのキスをするとは思わなかったが、彼は夢中で花桜梨の唇を味わった。
唇をくっつけているだけじゃ物足りなくなって、思い切って舌を彼女の唇を割って差し込む。
嫌がられるかもしれないと思ったが、胸の中に沸き起こる花桜梨への想いが彼を思い切った行動に移させた。
「八重さん・・・俺も・・・俺もずっと好きだった・・・!忘れようと思ったけど、出来なかったんだ!」
「ほんと?じゃあ・・・今でも・・・?」
「勿論だよ!八重さん!さっきまで変な意地張っていたけど・・・君の事が好きで好きでどうしようも無いくらいなんだ・・・!」
「嬉しい・・・。本当にあなたに再会できて良かった・・・。」
「八重さん・・・。俺も本当の事を知ることが出来て・・・君が来てくれて良かったよ・・・。」
二人は再び熱い口づけを交わすと、お互いの身体をしっかりと抱き合った。
それから、花桜梨は朱に染まった頬を彼の胸にくっつけてこう囁いた。
「・・・ねぇ、ベッドまで連れて行って・・・。」
「八重さん・・・、本当にいいの・・・?」
「うん、あなたがいいの・・・。」
花桜梨は嬉しそうな声でそれだけ答えると、彼にその美しい身体を委ねた。
・
・
・
ベッドの上で、花桜梨は一糸纏わぬ姿で仰向けになっていた。
彼がその上に覆い被さるような感じで花桜梨の肢体を見つめている。
初めて見る女性の・・・いや、花桜梨の身体はこの上無いほど美しく、彼の精神を甘く魅了してしまうほどであった。
奇麗な瞳に整った顔立ち、柔らかなセミロングの髪・・・。
白い肌、形の良い大きな胸、くびれたウエスト、丸くて女性らしいヒップから太腿にかけてのライン・・・。
今まで自分の妄想の中でしか見ることの無かった花桜梨の身体が目の前に・・・花桜梨の意思で晒されている。
当然、自分の妄想などよりも実際の花桜梨の身体は比べようもないくらいに美麗だった。
「八重さん・・・すごく綺麗だよ・・・。」
「ありがとう・・・。でも、ちょっと恥ずかしいね・・・。」
「・・・えっと、触ってもいいかな・・・?」
「いいよ・・・。あなたの好きな様にしてもいいから・・・。」
花桜梨の承諾を得てから、彼は最初に彼女の柔らかな胸に手を当ててみた。
とくん・・・とくん・・・と、胸の鼓動が温もりと共に掌に伝わってくる。
力を入れ過ぎないように、ほんの少しだけ手に力を入れてみる・・・。
ふわふわとした感触が手の中一杯に広がり、指の動きに合わせて形を変える花桜梨の乳房がエロチックだった。
「八重さんのおっぱい、柔らかいね・・・。それに、すごく気持ちいいよ・・・。」
「んっ・・・はぁ・・・あぁ・・っ、・・・あ・・ありがとう・・・あんっ・・・!」
胸を優しく弄られながら、花桜梨は初めて感じる快感に身体を時折びくっと震わせていた。
卒業式の日、些細な誤解が生み出した彼とのすれ違い・・・。それが今、やっと修復されていく。
胸を揉まれている事による感覚だけではなく、今日までずっと彼への温め続けていた想い・・・それらが花桜梨を感じさせていた。
「はぁ・・・ッ・・・んっ・・・!・・あんっ・・・、んッ・・あぁ・・私も・・・気持ちいい・・・。」
「八重さん・・・・。」
「ね・・・え・・・?花桜梨って呼んで・・・欲しいな・・・。」
花桜梨は快感に顔を歪めながらも、甘えるような声で彼にそう言った。
その間も甘い吐息が口から漏れる。恥じらいながらも感じている・・・そんな彼女の姿がたまらなく愛しく思えてならない。
彼は花桜梨の胸を揉みしだきつつ、ピンク色の乳首を口に含んで舌で転がす。
夢中で舌で舐めたりちゅうちゅうと吸い立てるうちに、口の中で花桜梨の乳首がどんどん硬く尖ってくるのが分かった。
「あんっ!駄目ッ・・・!気持ち良すぎて・・・はぁ・・・んっ!・・・変になっちゃうよ・・・!」
「花桜梨さん・・・、最高に綺麗で可愛いよ・・・。」
『綺麗』とか『可愛い』としか誉め言葉が見つからないことに少々情けなく思いながらも、彼は花桜梨の乳首をひたすら舌で責め続けた。
しかし、しばらく彼が花桜梨の乳首を責め続けたところで彼女の方が彼に声をかけてきた。
「はぁ・・・はぁ・・・、私も・・・してあげるね・・・。」
「えっ?」
そう言って身体を起こすと、花桜梨は彼の股間に顔を近づけて大きくそそり立ったモノを静かに手にした。
彼女の細い指が触れただけで、彼のペニスはびくんと大きく震える。
「わあ・・・、すごい・・・。こんなに大きくなってる・・・。」
「あはは・・・、花桜梨さんが魅力的だからだよ。」
「うふふ、そう言われると嬉しいな・・・。」
そう言いながらにっこりと微笑むと、花桜梨はゆっくりと彼のペニスを握る手を上下に動かし始める。
男性の性器を初めて触るのでどこかおっかなびっくりだが、花桜梨がしているという事だけで彼を気持ち良くさせるには充分だった。
「うっ・・・くっ・・・!」
「大丈夫?痛くない・・・?」
「痛くないよ・・・むしろ、気持ち良すぎて・・・。」
すぐに出てしまいそうだと言いかけたが、彼は寸でのところでその言葉の続きを呑み込んだ。
しかし、花桜梨は彼の言葉の続きが読めたようで、更に大胆な事をしようとする。
「うふふ・・・、あなたがそんなに感じてくれているなら・・・私も頑張っちゃうね。」
「えっ?か、花桜梨さん・・・。・・・うっ!」
花桜梨は顔を赤くして微笑んだかと思うと、ゆっくりと口の中に彼のペニスを咥え込んだ。
まさか初めてのセックスでそこまでしてくれるとは思わなかったので、思わず花桜梨を見つめてしまう。
彼が驚いていることに気付いた花桜梨は一旦口からペニスを離すと不安そうに訊ねた。
「あ・・・、ごめんなさい・・・。いやらしい女の子だって軽蔑した・・・?」
「い、いや・・・。口でしてくれるなんて思わなかったから、ちょっと驚いただけだよ。」
「本当に?それならいいけど・・・。・・・ねえ、もう口でしたら駄目かな・・・?」
「そ、そんな事無いよ!」
その質問に彼が首を激しく横に振って返事をすると、花桜梨は安心したかのように再び彼のペニスを口に含むと舌を使い始めた。
ちゅぱちゅぱと舌を絡めて舐め回したり、可愛い頬をすぼめて吸い込んだり・・・。
ちゅっ、ちゅぱっ、れろっ、あむっ・・・。
「花桜梨・・・さ・・・ん・・・!」
「ふふっ・・・ひもひいい?」
彼は自分のモノを咥えて一生懸命に頑張っている花桜梨を見下ろしているうちに、自分も花桜梨にしてあげたくなってきた。
だが、その前に一度出るモノを出さないと、かなりまずいところまで昇りつめているのも確かだった。
「花桜梨さん!もうそろそろ・・・!」
「んっ・・・はぁ・・・。・・・イキそうなの?私が受け止めてあげるね。」
花桜梨は口からペニスを離すと彼の限界が近い事を確認して、三度その口に彼のモノを咥え込んだ。
そして、ここぞとばかりに舌と唇を使って彼を責め立てる。
花桜梨の熱の篭った猛烈なフェラに彼が堪えられるはずもなく、次の瞬間には溜まりに溜まっていた欲情の証しを爆発させていた。
「うあ・・・!だ、駄目だ・・・!」
どびゅっ!どぴゅっ!びゅくっ、びゅくっ!
「・・・・んっ、んんっ・・・!」
今まで一人で性欲を処理してきた時には無かったほどの強烈な快感の中で、彼は花桜梨の口に射精した。
どくっ、どくっ・・・と、ペニスが激しく痙攣しながら、遠慮無く精液を花桜梨の口内に放ち続ける。
花桜梨は余りの勢いに驚きと苦しさの入り混じった顔を見せたが、それでもこぼさないように必死になって彼の射精を受け止め続けるのだった。
彼の射精が完全に終えてから、花桜梨はゆっくりとペニスから口を離した。
花桜梨の唇と彼のペニスの間を名残惜しげに光る糸がかかる。
「ご、ごめん!花桜梨さん!」
「びっくりした・・・。でも、大丈夫だよ・・・。」
花桜梨は口の中の精液をティッシュで処理して彼に微笑みかけた。
彼女が怒っていない事に一安心した彼は、花桜梨をぎゅっと抱きしめて感謝の気持ちを彼女に伝えてからベッドに横たわらせた。
「花桜梨さん、今度は俺の番だね。」
「え・・・?」
そう言うと、彼は花桜梨の足を左右に開かせるとその間に顔を埋めていった。
花桜梨の頬が一層赤く染まったのは、彼が彼女の秘部に舌を這わせたのと同時だった。
ぺろっ、ペろっ・・・、ちゅっ、ちゅっ・・・
「ひゃうっ・・・!そ、そんなところ・・汚いよぉ・・・!あっ・・あっ!ああっ・・・んっ!」
「花桜梨さんのココ・・・、どんどん濡れてきているよ・・・。」
「あなたに・・・あんっ!・・・・してもらって・・・はぁ・・っ!・・・いるから・・・ふあぁっ!ああん!」
「じゃあ、もっとしてあげるからね。」
舌で舐めるだけではなく、クリトリスをちゅっ、ちゅっ、と口で吸って刺激する。
すると愛液の量もどんどん増えて、花桜梨の秘部はますます卑猥に濡れていくのだった。
ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・ちゅぱっ、ちゅくっ・・・!
「・・・ひうっ!はあぁ・・・っ!も・・もう駄目・・・!これ以上されたら・・・私・・・!」
花桜梨の切羽詰まった声を聞いて、彼は舌の動きを止める・・・・事はしないで、ますます激しくして花桜梨の秘部を責め立てた。
真っ暗な室内に、ぴちゃぴちゃと濡れた音だけが静かに響いている。
そして、花桜梨の喘ぎ声と甘く、荒い息遣い・・・。
「あん!あんっ!!気持ちいい・・・っ!もう・・・イッちゃうよ・・・!あんっ!あぁっ!はあああぁぁん・・・!!」
花桜梨が一際高い声を上げて身体を震わせた。
そして、力尽きたかのようにぐったりとベッドの上に肢体を投げ出す。
どうやら絶頂に達したようだ。
「花桜梨さん、大丈夫・・・?」
「はぁ・・・はぁ・・・、大丈夫・・・だよ・・・。気持ち良かった・・・。」
「あのさ・・・、そろそろ・・・いいかな?」
彼はそう言って、花桜梨に再び元気を取り戻した股間のソレを見せる。
花桜梨は絶頂の余韻に浸りながら、彼のペニスを優しく触りながらこくりと頷いた。
・・・・いよいよ、花桜梨さんの中に・・・・!
彼はそう思うと、思わず生唾を飲み込んだ。何せ、お互いセックスが初めてなので上手くいくかどうか分からない。
ただ、お互いの事が愛しくて仕方ないと言うことだけは確かだ。
とにかく、慌てずにやれる事を精一杯頑張ってみる・・・それだけだった。
「花桜梨さん、それじゃ・・・入れるよ・・・。」
「うん・・・。」
彼はいきり立った自分のモノを花桜梨の膣口に慎重にあてがった。
つぷ・・・と、小さな音を立てて亀頭の先端が柔らかな粘膜に包まれる。それだけで彼は激しい興奮を覚えて、ますます胸の鼓動は高鳴っていく。
花桜梨は彼の手をしっかりと握り締めて、破瓜の恐怖と必死に戦っていた。
ずっ、ずぶぶぶ・・・!
「んッ・・・!あうっ・・・!!」
「花桜梨さん・・・痛い?」
「へ、平気・・・だよ・・・。続けて・・・。」
花桜梨の顔が苦悶に歪む。彼のペニスが奥へ奥へと進むにつれて、彼女を襲う痛みもどんどん激しくなっていく。
しばらく進んだ所で、彼は亀頭の先端に何かが触れるのが感じられた。
直感で、これが花桜梨の純潔の証・・・処女膜だと分かった。
「(・・・・花桜梨さん!行くよ・・・!)」
ずぶっ!じゅぶぶぶぶ・・・!!
「あああぁぁっ・・・!!」
彼は一気に腰を沈めると、そのまま花桜梨の奥深くまでペニスを突き入れた。
侵入を拒む抵抗感が一瞬あったが、次の瞬間には彼のモノは一気に花桜梨の中を突き進むことが出来た。
花桜梨は切なげな声を上げて彼の手を力一杯、ぎゅっと握り締めた。
「花桜梨さん、入ったよ・・・。」
「はぁ・・・はぁ・・・、私たち・・・一つになったんだね・・・。嬉しい・・・。」
破瓜の痛みに涙を浮かばせながら、花桜梨は健気に微笑んでそう言った。
結合部からは、紅い血が愛液に混じって流れ出している。
それが紛れも無く、花桜梨が今まで処女だった事を証明していた。
「花桜梨さん・・・。辛かったらこれで止めておこうか・・・?」
「ううん・・・、もう少し待てば大分収まると思うから・・・。」
「だけど・・・。」
「私ね・・・あなたと折角一つになったんだから、最後まで続けて欲しいの・・・。お願い・・・。」
その言葉に彼は決心した。彼女の気持ちに応えるためにも、自分に出来る限りの事はしようと・・・。
花桜梨の波が収まるまでしばらく中に入れたままで様子を見る。
少しでも彼女の痛みを紛らわせてあげたくて、彼は繋がったままで花桜梨の胸を優しく揉みしだきながら熱いキスを繰り返す。
「はぁ、はぁ・・・。動いてもいいよ・・・。」
「うん、どうしても痛かったら言うんだよ?」
「ありがとう・・・、優しいね・・・。」
花桜梨は痛みに耐えながらも嬉しそうに微笑むと、彼の背中に手を回してしっかりと抱きしめた。
彼女にあまり負担をかけないように、ゆっくりと腰を動かし始める。
初めて体験する花桜梨の中・・・温かくて、きつくて、熱くて・・・。
花桜梨の事を考えると余りに早く腰を動かしてはいけないと頭では判っていても、めくるめく快感が彼の思考を奪う。
ちゅくっ、じゅぷっ、ずぷぷっ・・・!
「はぁ・・・んッ・・・ああっ・・・ああぁぁ・・・んっ!」
「花桜梨さん・・・!花桜梨さん・・・!好きだ!大好きだよ!」
「私も・・・好き・・・!あなたの事・・・・大好き・・・!」
愛する花桜梨の名前を何度も呼びながら、彼は夢中で花桜梨を味わっていた。
腰を沈める度に、花桜梨は喘ぎとうめき声ともつかない声を上げる。
ペニスから伝わる花桜梨の温もりだけではなく、彼女のそんな声も彼の興奮を高めて自ずと限界へと追い込んでいった。
二回目の射精感を感じて、彼は花桜梨に声をかけた。
「花桜梨さん・・・っ!もうイキそう・・・!」
「はぁ・・っ!このまま・・・私の中で・・・ああんっ・・・!」
「くっ・・・!だ、出すよ・・!!」
どぴゅっ、どぴゅっ!どくっ、どくっ・・・!
花桜梨の返事を聞いた時には、もう我慢の限界に達していた。
彼は花桜梨をきつく抱きしめると、そのまま彼女の膣内(なか)に花桜梨への想いの塊を放った。
「はあぁぁ・・・っ・・・!あ・・・熱い・・・!」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・花桜梨さん・・・!」
花桜梨は自分の中に熱い迸りを感じて、そのまま放心状態になってしまう。
彼もまた、射精の快感に翻弄されて柔らかな花桜梨の胸に自分の胸を重ねるようにして倒れ込んだ。
そのまま、二人は身体を重ね合わせたまま眠り込んでしまった・・・・。
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気がつくと、既に時刻は深夜2時を過ぎていた。
隣では花桜梨が裸のまま、彼の腕に自分の胸をくっつけるようにして寝息を立てている。
「(花桜梨さん・・・可愛い寝顔だな・・・。)」
「うう・・・ん・・・。」
「(・・・・俺は・・・花桜梨さんと一つになって愛し合ったんだよな・・・。まるで夢みたいだ・・・。)」
数時間前に起きた出来事が何だか夢のように感じられてしまう。
しかし、現実に花桜梨は自分の隣で裸のまま眠っている。それが花桜梨と結ばれた事が現実だという証拠だ。
「・・・・んん・・・。あ・・・、起きてたの・・?」
「あ、起こしちゃったかな。ちょっと花桜梨さんの寝顔を見てたんだよ。」
「ふふ・・・、恥かしいよ・・・。」
花桜梨は恥かしそうに頬を薄っすらと紅く染めると、彼の胸に顔を埋めた。
そんな彼女の背中を優しく抱きしめながら、頭を撫でてあげる。
・・・と、彼はある事を思い出して花桜梨に話し掛けた。
「そう言えば・・・クリスマスプレゼントがまだだったね・・・。夜が明けたら、何か買いに行こうか。」
「本当に・・・?でも、私はもうプレゼントは受け取ったよ・・・。」
「えっ?」
「・・・・あなたって言う、素敵な恋人だよ・・・。」
花桜梨はそう囁くと、彼の唇に自分の可憐な唇を重ね合わせる。
そうやってしばらくキスをしていたが、急に彼女は言葉を付け足した。
「あなたへのプレゼントは・・・まだだったよね?何がいいかなあ・・・。」
「・・・・俺も、プレゼントはいいや。」
「えっ、ひょっとしてあなたも・・・。」
「そうだよ。プレゼントは花桜梨さん、君で充分だからね!」
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こうして、虚しく過ぎるはずだった彼のクリスマスイヴは最高のモノとなった。
無論、花桜梨にとってもそれは同じ事だったのは言うまでもない。
どうか二人の幸せが永遠に続きますように・・・。
Fin...
あとがき
毎度どうも、ATFでございます。
何とか、クリスマス前に時節純愛モノで花桜梨さん処女SSを書き上げる事が出来ました〜・・・。
ネタが浮かんだのは22日の午前2時前後で、現在午前8時10分・・・・。6時間の死闘の末、やっとケリがつきました。(汗
これから夕方5時から10時までバイトがある事を考えると・・・そりゃあもう・・・ねぇ?いろいろと鬱になります。(苦笑)
一度でいいから、こんなクリスマスを過ごしてみたいものですわ・・・。(^^;
それでは、また〜!